Like a Child②

 

LINEが来てからというもの、頭の中はそればっかり。授業終了のチャイムが鳴ると同時に、カバンを掴んで教室を飛び出す。今日が部活の無い日で良かった。

 

電車に飛び乗って、一気に地元の駅まで。

改札を通り抜けたら家とは逆方向に。

 

「優吾!!」

 

オシャレなカフェのカラン、と音の鳴る扉を開けて、彼の名前を呼ぶ。

 

「いらっしゃい」

 

ニッコリと笑った顔は、実年齢よりも幼い。

 

「ゆうご〜〜」 

「今日はどうした?」

「担任に生徒会選挙出ろ、って」

「出ないんだろ?」 

「出ない」

 

ため息と共にテーブルに突っ伏す。断りに行かなきゃ。めんどくさい。

コト、と音がして目の前に置かれたのは甘い甘いココア。

 

「ありがとう〜」

 

1口それを啜れば、いつもと同じ甘さが、イライラを溶かす。

 

「ホントココア好きだな。」

「ちーがーう。優吾が作るココアが好きなの。」

 

ここのカフェで働いてる優吾は、私の幼馴染みのお兄さん的な人。人懐っこい感じで、マスターにも気に入られてるから、こうして私を招いてくれる。

 

ここに来たからといって特にやることはない。いつもみたいに隅の方の席で課題を広げて、優吾が上がるまで待つ、のがルーティン。

 

不意に、カラン、と扉が開く音がして顔を上げると、

 

「北斗!」

 

優吾が少し嬉しそうな声を出す。その先には、黒髪の、爽やかっぽい感じのイケメン。

ぼんやりその人を眺めてたら、目が合って、ニッコリ。笑った顔はちょっと可愛い。

条件反射的に、ペコ、と軽く会釈をする。

 

「優吾、誰?」

 

近くを通ったタイミングで、優吾に尋ねる。

 

「大学の友達。イイヤツだよ。」

 

別にそこまでは聞いてないんだけど。でも優吾がわざわざ“イイヤツ” なんて言うんだから、それはイイヤツなんだろう。

 

私が座っている位置から、椅子を2つ空けて座る北斗さん。

鞄から取り出したのは、小説。

カタ、と優吾が北斗さんの所に置いたのは、アイスティーとケーキ。ケーキとか食べるんだ。食べなさそうなのに。なんて考えていると、

 

「どうかした?」

 

あまりにも長い間眺めていたからか、北斗さんに声をかけられてしまった。

 

「あ、いや、なんでもないです...」 

 

びっくりして、自分が思っていたよりも小さい声になってしまった。

 

「君、もしかして◯◯ちゃん?」

「えっ、」

「やっぱり!髙地がよく話してるんだよ」

「は?」

「可愛い幼馴染みがいる、ってね」

 

ふんわりと笑う北斗さんから出る、“可愛い”の単語にきゅんとしてしまう。しっかりしろ、私。言ったのは優吾。お兄ちゃんみたいな人。つまりそういう意味じゃない。

 

「そう、なんですね。」

「あ、松村北斗って言います。」

「えと、よろしくお願いします。」

 

少しだけ高い、優しい感じの声が、心地よい。

なんとなく、なんとなくだけど、好きだなぁって。そう思った。